当院へ通院されている方の老年期が、体の不調を気にせず豊かな生活を送れる健康寿命を延ばすために学びました。
しばしばアンチエイジング医学と言われます。究極は若返りですが、残念なことに現在それを十分には望めません。
では何を目標としているのでしょうか。
第一の目標は健康寿命の延伸です。日本は世界的にも長寿大国となりましたが、その終末期には体が不健康な期間(要介護・要医療となる期間)があります。平均寿命は延びているにも関わらず不健康な期間は8〜12年と20年前からほぼ変化がありません。
折角長くなった寿命をいかに健康的に過ごすかを目的としているのです。
加齢とは暦年齢とも言われ生物が等しく増えていくものです。老化とは生物学的年齢と言われ、成熟期以降に起こる生理機能の衰退です。
老化は加齢に伴って避け難い正常な範囲内での老化と、病的な老化に分けられます。この両方を合わせたものが実際の老化であり、生物学的年齢に相当します。
2023年カルロス・ロペス=オーチンらより「Cell」へ発表された「The hallmarks of aging」で老化とは3つの特徴があると言われています。
老化因子は2013年発表された9因子に2023年では3因子を加え12の因子が挙げられています。
老化は加齢と異なり、様々な要因がお互いに影響し合い全体として生物学的年齢が促進されたり遅延・停止あるいは逆転させ得ると考えられています。
現在健康に不安が無かったとしても正常な範囲内での老化は生じますし、病的な老化によりいつ心臓病・脳卒中やがんを罹患するかもわかりません。将来認知症を発症するかもしれませんし骨粗鬆症による骨折を起こして歩けなくなるかもしれません。
こういった病的な部分は検査で見つけ、ある程度予防したり治療したりすることもできます。予防や治療をすれば、健康に過ごせる健康寿命を延ばすことにつながります。そのため、抗加齢医学とは、正確には抗『病的な』加齢の医学といえます。
現代社会ではストレスが確実に増加しています。抗加齢医学は身体のみならず心も治療する統合的・総体的なアプローチから健康の最適化に重点を置いています。そのため、心理的アプローチやフィットネス、栄養学的な知識も必要となります。
抗加齢医学の目的は「不健康寿命の短縮」と申しました。不健康状態とは具体的には要介護状態とするとイメージし易いかと思います。では要介護状態となった原因として多いものは・脳卒中・関節疾患や骨折、転倒・認知症・衰弱などです。
要介護状態に陥ると抜け出すのは難しくなります。その前段階であるフレイル、更に前段階であるプレフレイルの時期にこそ抗加齢医学の出番があると言えます。
ではそのリスクがあるか否かを評価するにはどういったことに着目するべきでしょうか。
現在の老化を評価するためのツールとして老化度があります。
具体的には
の5項目で評価します。
病的老化を促進してしまう危険因子も評価します。
酸化ストレス | 主に活性酸素種による体の錆びつき |
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糖化ストレス | 主に過剰な糖質で生じるAGEsによる体の焦げつき |
免疫ストレス | いわゆる免疫力の低下とこれに伴う微弱だが延々と続く炎症 |
生活習慣 | 食事・運動のみならず睡眠や飲酒・喫煙による影響 |
心身ストレス | 心理的負荷のみならず脳下垂体を介したホルモンへの影響も生じる |
これら機能年齢に対する絶対評価法は確立されておらず、相対評価(何歳レベルに相当するか)で行われています。これら10項目のうち最も機能年齢が高い項目と最も大きな危険因子の2項目を是正することで全体の8割の抗加齢が達成できると言われています。
抗加齢医学の第一目標は健康寿命の延伸です。即ち疾病を加療する「cure(キュア)」より、疾病に陥らせないための「care(ケア)」が中心となります。心疾患だから心臓が止まらないようにするのがcureですが、その心疾患を発症させるような食習慣や運動習慣、更に睡眠習慣や精神的ストレスなど全人的なアプローチにより予防するcareが抗加齢医学となります。
このように抗加齢医学は予防医学・学際的・実践的な医学であり、アンチエイジングという人類の最終的な理想を追求する最も先進的な医学です。最先端であるため、未だ確実な方法や確立された治療が成立しているわけではなく、細胞・遺伝子レベルの実験的で基礎医学的な要素を多分に含んでいます。
新しい知見がどんどん発表される上、今まで良いとされていたものが実はあまり効果がない、むしろ良くないなど否定されることも多い分野です。その結果の真贋や確からしさを判断し、臨床応用するのが抗加齢医学専門医や指導士の役割だと考えます。